進化し続ける発馬機:競馬の公正なスタートを支える技術
競馬を知りたい
先生、競馬のスタートで使う『発馬機』って、昔から今と同じ形だったんですか?
競馬研究家
いい質問だね。実は、発馬機の形は時代とともに大きく変化してきたんだよ。昔は、綱を張ってバネで跳ね上げるタイプのものを使っていたんだ。
競馬を知りたい
へえー、綱ですか?今の形とは全然違いますね。どうして変わったんですか?
競馬研究家
馬が落ち着いてスタートできなかったり、怪我をすることがあったからなんだ。それで、改良を重ねて、今の安全な電動式の発馬機になったんだよ。
発馬機とは。
競馬で、馬たちが同時にスタートできるようにするための装置、発馬機について説明します。日本では、昔は人が旗を振ってスタートの合図をしていましたが、1926年からオーストラリア式の、綱を張ってバネの力で跳ね上げるタイプのものが使われるようになりました。しかし、馬がじっとしていられず、飛び出したり、くるくる回ったりして、スタートで出遅れることがよくありました。そこで、1960年には、軽くて持ち運びしやすい、パイプを組み合わせたような、前の扉が開くウッド式という発馬機に変わりました。ところが、今度は軽すぎるため、馬が暴れるとゲート全体が動いてしまうことや、馬がスタートするときに足元のパイプを踏んでしまう危険がありました。そのため、ウッド式の欠点を改良し、電気で前の扉が開くJSG48型という発馬機が1975年から使われるようになりました。その後も、1985年、1990年、1995年、2000年と改良が重ねられ、2007年6月からは、操作しやすく安全性を高めた最新のJSS30型が使われています。このJSS30型には、すべての馬がゲートに入ったことを、後ろにいる係の人が上の席の係の人に知らせるためのランプがついています。
発馬機の起源
競馬において、全ての馬が同じ条件でスタートを切れるようにすることは、公平なレースを行う上で非常に重要です。この公平なスタートを実現するために欠かせないのが発馬機です。発馬機が登場する以前の日本では、スタートの合図は人が旗を振るなどして行われていました。しかし、人の手で行う合図では、どうしても合図のタイミングにばらつきが生じてしまい、全ての馬に一斉にスタートの合図を送ることが難しかったのです。そのため、スタートのタイミングの差によって有利不利が生じ、レースの公平性が損なわれるという問題がありました。
より公平なレースの実現を目指し、近代競馬において発馬機の導入が検討されるようになりました。発馬機とは、各馬房に馬を入れ、一斉にゲートを開けることで全ての馬を同時にスタートさせる装置です。この装置の導入により、スタートのタイミングのばらつきを最小限に抑え、各馬がほぼ同時にスタートできるようになりました。発馬機の導入は、それまで人力で行っていたスタートの合図を機械化することで、レースの公平性を格段に向上させるという大きな進歩をもたらしました。
実は、日本よりも先に海外の競馬では既に発馬機が使用されていました。海外の競馬における発馬機の導入事例を参考に、日本でも発馬機の導入が本格的に進められるようになったのです。こうして、発馬機は近代競馬に欠かせないものとして定着し、今日に至るまで競馬の公平性を支える重要な役割を担っています。発馬機の登場は、近代競馬の発展における大きな一歩と言えるでしょう。
時代 | スタート方式 | 公平性 | 問題点 |
---|---|---|---|
発馬機導入前 | 人による合図(旗振りなど) | 低い | 合図のタイミングのばらつきによる有利不利 |
発馬機導入後 | 発馬機によるゲートスタート | 高い | – |
初期の発馬機の課題
競馬において、公平なスタートを切ることは大変重要です。日本では、1926年に初めて濠州式バリヤーと呼ばれる発馬機が導入されました。これは、コースの内外に綱を張り、バネの力で綱を斜め前方に跳ね上げることで馬をスタートさせるという仕組みでした。しかし、この発馬機は様々な課題を抱えていました。
まず、馬が装置の中でじっとしていられないという問題がありました。馬は本来、自由に動くことを好みます。狭い場所に閉じ込められると、落ち着きを失い、暴れたり、前へ突っ込んだり、回転したりしてしまうのです。そのため、スタートの合図と同時にスムーズに飛び出すことができず、出遅れてしまう馬が続出しました。
また、この装置の操作も複雑でした。バネの力を利用して綱を跳ね上げるため、そのタイミングを正確に合わせることが難しく、担当者の熟練した技術が必要でした。さらに、装置自体も大きく、設置や移動に手間がかかるという難点もありました。
これらの問題点は、レースの公正さを損なう大きな要因となりました。スタートで出遅れた馬は、他の馬に追いつくために大きなハンデを負うことになります。勝敗に大きく影響してしまうため、競馬の公正な競争を確保するという発馬機の本来の目的を果たせているとは言えませんでした。より良い発馬機の開発が強く求められたのです。当時の競馬関係者は、これらの課題を解決するため、改良を重ねていくことになります。
濠州式バリヤーの課題 | 詳細 | 影響 |
---|---|---|
馬がじっとしていられない | 馬は狭い場所では落ち着きを失い、暴れたり、前へ突っ込んだり、回転したりする。 | スタートで出遅れる馬が続出 |
操作が複雑 | バネの力を利用した綱の跳ね上げタイミングを正確に合わせるのが難しい。担当者の熟練した技術が必要。 | スタートのタイミングにばらつきが生じる可能性がある。 |
装置が大きい | 設置や移動に手間がかかる。 | 運用上の非効率性 |
レースの公正さを損なう | 出遅れた馬は大きなハンデを負う。 | 競馬の公正な競争を阻害する。 |
改良への歩み
安全な発馬装置の開発は、競馬の近代化において重要な課題でした。かつては濠州式バリヤーと呼ばれる、主に木製の柵で区切られた発馬装置が用いられていました。しかし、この装置は大型で移動が難しく、また馬体への負担も大きいという欠点がありました。そのため、より安全で効率的な発馬装置の開発が求められていたのです。
1960年、濠州式バリヤーの欠点を解消するために、ウッド式発馬機が導入されました。これは金属製のパイプを組み合わせて作られた、軽量で移動しやすい構造でした。発馬の際は、前方の扉が開くことで馬が一斉にスタートラインを切ることができるようになっていました。このウッド式発馬機は、従来の濠州式に比べて大幅に改良されたもので、競馬関係者から大きな期待を寄せられました。
しかし、ウッド式にも課題がありました。馬がゲート内で興奮して暴れると、ゲート全体が揺れてしまうのです。これは馬体への負担となるだけでなく、公平なスタートを妨げる要因にもなりました。さらに、馬がゲートの脚元のパイプを踏んでしまう危険性もありました。パイプに脚を挟めば、馬は大きな怪我を負ってしまう可能性があります。そのため、ウッド式発馬機は、更なる改良の必要性を示唆するものとなったのです。競馬の安全性向上を目指す関係者たちは、新たな発馬装置の開発に向けて、更なる研究と改良に取り組んでいくことになりました。ウッド式発馬機の導入は、競馬における安全性の向上に向けた大きな一歩でしたが、同時に新たな課題を生み出すことにもなったのです。この経験は、競馬の近代化に向けた努力が、常に試行錯誤の連続であることを示しています。
発馬装置 | メリット | デメリット |
---|---|---|
濠州式バリヤー | – | 大型で移動が難しい 馬体への負担が大きい |
ウッド式発馬機 | 軽量で移動しやすい 前方扉による一斉スタート |
ゲートが揺れて馬体への負担、公平なスタートを妨げる 馬がゲート脚元のパイプを踏んで怪我をする危険性 |
電動式発馬機の登場
かつて競馬のスタートには、木材で作られた発馬機が使われていました。しかし、この旧式の装置にはいくつかの難点がありました。例えば、スタート時に扉を開ける際、人による操作ではどうしてもばらつきが生じてしまい、公平性に欠けるという問題がありました。そこで、より公正で安全なスタートを実現するために、電気の力を用いた電動式発馬機が開発されました。この新しい発馬機は「JSG48型」と呼ばれ、1975年から競馬場に導入され始めました。
JSG48型の発馬機が従来のものと大きく異なる点は、前扉の開閉に電気の力を使うという点です。スイッチ一つで扉を動かすことができるため、人の手で行うよりも格段に正確で、かつ素早く開けることができるようになりました。これにより、どの馬にもほぼ同時にスタートの機会が与えられ、レースの公平性が大きく向上しました。さらに、この電動式の発馬機は、導入後も改良が続けられました。1985年、1990年、1995年、そして2000年と、およそ5年ごとに改良が加えられ、安全性と操作性が向上していきました。
これらの改良によって、馬がゲート内で落ち着いて待機できるようになり、スタート時の事故発生率も減少しました。例えば、馬がゲート内で暴れてしまうのを防ぐための工夫や、万が一馬がゲート内で転倒した場合でも速やかに救出できるような仕組みが導入されました。また、発馬機の操作を担当する係員にとっても、操作が簡単になり、より安全に作業を行えるようになりました。電動式発馬機の導入と改良は、競馬における安全性向上に大きく貢献したと言えるでしょう。より安全で公正なレースの実現は、競馬関係者だけでなく、競馬を愛する多くのファンにとっても喜ばしい成果と言えるでしょう。
発馬機の種類 | 特徴 | メリット・デメリット |
---|---|---|
旧式 (木材) | 人による手動操作 |
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JSG48型 (電動式) |
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最新型の発馬機
競馬のスタートには、全ての馬が公平に走り始めるための装置、発馬機が用いられています。現在使われているのは二〇〇七年六月から導入された最新型のJSS30型です。この発馬機は、これまでの機種で培われた技術を詰め込んだ、操作性と安全性を高めたものとなっています。
従来の発馬機にも改良が重ねられてきましたが、JSS30型は、よりスムーズなレースの進行を可能にする様々な工夫が凝らされています。例えば、ゲート内に馬が入る様子を確認する係員は、以前は直接目で見て確認するしかありませんでしたが、JSS30型では、全ての馬が枠内に入ったことを確認するためのランプが設置されました。このランプによって、後方の係員は台上の係員に馬の枠入り完了を知らせられるようになり、迅速で正確なスタートが可能となりました。
このランプの設置は、単にスタートの合図をスムーズにするだけでなく、競馬の公正さを保つ上でも大きな役割を果たしています。全ての馬が正しくゲートに入り、公平なスタートが切られることで、レースの結果が馬本来の能力によって左右されることが保証されるのです。
また、JSS30型は、馬の安全にも配慮した設計となっています。ゲート内での馬の動きを細かく監視し、予期せぬ事態が発生した場合には、速やかに対応できるシステムが構築されています。これにより、馬がゲート内で怪我をするなどの事故を未然に防ぎ、安全なレース運営に貢献しています。
このように、JSS30型は、操作性、安全性、そして公正さという、競馬にとって重要な要素を全て兼ね備えた発馬機と言えるでしょう。競馬の進化は、こうした技術の進歩にも支えられているのです。
発馬機の種類 | 特徴 | メリット |
---|---|---|
JSS30型 | 操作性と安全性を高めた設計 全ての馬が枠内に入ったことを確認するためのランプを設置 馬の安全に配慮した設計 |
スムーズなレース進行 迅速で正確なスタート 競馬の公正さの確保 馬の事故防止 |
未来の発馬機
競馬は馬の速さを競う競技ですが、良いスタートを切れるかどうかで勝敗が大きく左右されることもあります。そのため、公平で安全なスタートを切るための装置、発馬機は非常に重要な役割を担っています。技術の進歩とともに、この発馬機も進化を続けており、より安全で、より公平なスタートを実現するための改良が日々進められています。
現在主流となっている発馬機は、各馬房に馬が入り、一斉にゲートが開くことでスタートを切ります。しかし、馬にはそれぞれ個性があり、ゲートが開く前から落ち着きがなかったり、逆にゲートが開いてもすぐに飛び出せない馬もいます。このような馬の個体差は、スタートの良し悪しに影響を与えるだけでなく、馬同士の接触や落馬といった事故につながる危険性もはらんでいます。そこで、未来の発馬機には、馬の個体差を認識して、ゲートが開くタイミングを調整する機能が搭載されるかもしれません。例えば、ゲート内で落ち着かない馬には少し早めにゲートを開き、スタートが遅い馬には少し遅めにゲートを開くことで、全ての馬がほぼ同時にスタートラインを通過できるように調整するのです。
また、馬のストレスを軽減するための工夫も重要です。馬は繊細な生き物なので、狭い馬房の中で待機している間、大きなストレスを感じている可能性があります。このストレスを軽減するために、馬房の素材にも改良の余地があります。例えば、馬が落ち着く香りの素材や、馬体が触れても痛くない柔らかい素材を使用することで、馬のストレスを軽減し、より自然なスタートを促すことができるでしょう。さらに、発馬機の形状そのものも見直されるかもしれません。現在の箱型の馬房ではなく、より開放的な形状にすることで、馬の圧迫感を軽減できる可能性があります。
競馬は馬の能力を競う競技であると同時に、馬の安全も確保されるべきものです。未来の発馬機は、これらの要素を両立させる形で進化していくでしょう。より安全で公平なスタートを実現するだけでなく、馬の福祉にも配慮した発馬機の開発が期待されています。技術の進歩は、競馬という競技をより一層進化させ、人馬一体の感動を生み出していくことでしょう。
課題 | 未来の発馬機の改良点 |
---|---|
馬の個体差によるスタートのバラつき | 馬の個体差を認識し、ゲートが開くタイミングを調整する機能を搭載。落ち着かない馬には早めに、スタートが遅い馬には遅めにゲートを開く。 |
馬房内での馬のストレス | 馬が落ち着く香りの素材や、柔らかい素材を使用。馬房の形状も、より開放的な形状に見直す。 |
馬の安全確保 | 上記改良により、馬同士の接触や落馬といった事故の危険性を軽減。 |