
チャカつく:競走馬の心の内
競馬場のパドックを周回する馬たちの中で、しきりに足を踏み鳴らし、体を揺らし、落ち着きなく動く馬を見かけることがあります。まるで子供のようにはしゃいでいるように見えるその様子は、競馬用語で「チャカつく」と呼ばれます。
チャカつく馬は、まるで今にも走り出したくてうずうずしている子供のようです。抑えきれないほどのエネルギーが、全身から溢れ出ているように見えます。この行動は、レースへの期待感や高揚感、あるいは緊張感など、様々な感情が複雑に絡み合って生まれたものだと考えられます。
一見すると、その様子は闘志をむき出しにした、力強い馬の姿に見えるかもしれません。今にも爆発しそうな力強さを感じ、良い兆候だと捉える人もいるでしょう。しかし、必ずしも良い兆候とは言えないのです。なぜなら、過度の興奮状態は、レースにおける馬本来の力を発揮する妨げとなる可能性があるからです。チャカつきは、エネルギーの無駄遣いにつながり、肝心のレースでスタミナ切れを起こしたり、騎手の指示に従えなくなったりする原因となることがあります。
騎手は、こうしたチャカつく馬を落ち着かせ、無駄なエネルギーを消費させないように努めます。パドックでは、馬の気持ちを静めるように優しく声をかけたり、手綱を巧みに操って歩調を整えたりします。ゲートインの際も、落ち着いてゲートに入れるように細心の注意を払います。チャカつく馬をうまくコントロールし、持てる力を最大限に発揮させるためには、騎手の経験と技術が重要になります。馬の状態を見極め、適切な対応をすることで、初めてチャカつく馬の秘めたる力を引き出すことができるのです。