
蹄叉腐爛:馬の蹄を守るために
蹄叉腐爛は、馬の蹄の裏側にある「蹄叉」と呼ばれるV字型の部分の角質が腐ってしまう病気です。この蹄叉は、馬が地面を蹴った時の衝撃を吸収する、いわばクッションの役割を果たす重要な器官です。人間で言うならば、かかとにあたる部分であり、常に体重がかかり、地面からの衝撃を受けていることを想像すると、その重要性が理解できるでしょう。
この蹄叉が腐ってしまうと、蹄叉にある中溝や測溝と呼ばれる溝に、悪臭を放つ汚物や汚汁が溜まります。見た目にも汚く、蹄叉が黒く変色することもあります。これは、人間の足の爪の間が常に湿った不衛生な状態になり、細菌感染を起こしている状態と似ています。見た目も悪く、痛みも伴い、日常生活に支障をきたすのと同じように、馬にとっても蹄は歩くために必要不可欠な器官であり、蹄叉腐爛は歩くことを困難にする深刻な病気なのです。
蹄叉腐爛の主な原因は、不衛生な環境です。泥や糞尿で汚れた馬房に長時間馬を置いておくことで、蹄叉が常に湿った状態になり、細菌が繁殖しやすくなります。特に、湿気が多く、気温が高い時期は要注意です。また、蹄の手入れ不足も原因の一つです。蹄を定期的に掃除し、削蹄(蹄を適切な形に整える作業)を行うことで、蹄叉腐爛を予防することができます。
蹄叉腐爛を放置すると、悪臭が強くなるだけでなく、激しい痛みを伴うこともあります。馬は痛みで歩行困難になることもあり、運動能力が低下します。さらに、細菌感染が重症化すると、蹄内部の組織に炎症が広がり、最悪の場合、蹄の骨にまで影響を及ぼす可能性もあります。そのため、早期発見と適切な治療が非常に重要です。蹄叉に異変を感じたら、すぐに獣医師に相談し、適切な処置を受けるようにしましょう。日頃から馬房の清潔を保ち、蹄の手入れを怠らないことが、蹄叉腐爛の予防、そして馬の健康維持に繋がります。