
競馬における騙馬の役割
馬が走る速さを競う競馬の世界には、様々な種類の馬がいます。走るのが得意な馬、そうでない馬、穏やかな馬、気性の荒い馬など、個性は様々です。その中でも今回は「騙馬(せんば)」と呼ばれる、少し変わった種類の馬についてお話します。騙馬とは、雄馬を去勢した馬のことです。去勢とは、繁殖能力を失わせるために行う処置のことです。少し可哀想な印象を受けるかもしれませんが、競馬の世界では馬の気性や能力を上手に管理するために、昔から行われている方法の一つです。雄馬は一般的に、気性が荒く、競走に集中しにくい傾向があります。繁殖や雌馬への関心が高く、レースに集中できないためです。そこで、去勢することで、そうした雄馬特有の気を鎮め、競走により集中できるようにするのです。去勢された馬は、闘争心が弱まり、穏やかな性格になる傾向があります。無駄な力を使わなくなり、落ち着いて走ることに集中できるため、レースでのパフォーマンスが向上する場合もあります。また、雄馬特有の筋肉の付き方が変わり、持久力が増す場合もあります。長距離のレースで有利になることもあるため、騙馬にするかどうかは、馬の個性や適性を見極めて判断されます。騙馬は、生まれ持った能力だけで走るわけではありません。調教師や厩務員といった人たちの努力によって、能力を最大限に引き出されています。毎日の調教や食事管理、健康管理など、様々な工夫が凝らされています。騙馬になった後も、周りの人たちの支えがあってこそ、競走馬として活躍できるのです。競馬を観戦する際には、こうした騙馬の背景にも思いを馳せてみると、より一層競馬の奥深さを感じることができるかもしれません。もしかしたら、お気に入りの馬が騙馬で、その活躍の裏には、想像以上の努力と工夫が隠されているかもしれません。