
馬の額の模様:珠目について
馬の顔をよく見ると、額に渦を巻いた毛の流れがあるのに気づきますか?これは、私たち人間のつむじと同じように、馬の額にある毛並みの渦巻きで、「珠目(しゅもく)」と呼ばれています。古くから馬を品定めする際に、この珠目は重要な手がかりの一つとして大切にされてきました。
珠目は、その位置や形によって様々な呼び名があり、例えば、額の中央にあるものは「的目(まといめ)」、額の上部にあるものは「天目(てんもく)」、左右どちらかに寄っているものは「寄り目(よりめ)」などと呼ばれています。まるで人間の指紋のように、全く同じ珠目を持つ馬はいないため、馬を見分ける重要な目印にもなっていました。昔は馬の売買の際に、珠目の位置や形を記録に残し、その馬の個性を見極める一種の戸籍代わりとしていたほどです。
珠目の良し悪しを判断する基準は、その位置と形、そして毛並みの美しさにあります。額の中心に位置し、渦が美しく整っている珠目は吉相とされ、特に的目は馬の気性を穏やかにすると信じられてきました。一方、渦が乱れていたり、左右に大きく寄っていたりする珠目は、気性が荒い証拠だと考えられてきました。
もちろん、珠目の位置や形で馬の性格が全て決まるわけではありません。しかし、馬の個性を象徴する珠目は、馬を深く理解するための手がかりの一つとして、今でも大切にされています。小さな渦巻き模様の中に、その馬が生きてきた歴史や個性が刻まれていると言えるでしょう。