
クモズレ:競走馬の宿命
競走馬の脚、特に後ろ脚の球節の下あたりをよく見てみると、円形に腫れ上がった傷を見かけることがあります。これを「くもずれ」といいます。球節というのは、馬のひづめの上にある、人のくるぶしのような丸く膨らんだ部分です。この球節の下部に、馬場の砂などがこすれ付いて傷になってしまうのです。まるで蜘蛛の巣のように見えることから、「くもずれ」と呼ばれるようになりました。「ともずれ」と呼ばれることもあります。
くもずれは、競走馬にとって宿命とも言える外傷です。なぜなら、競走馬は速く走るために後ろ脚で地面を力強く蹴り上げます。この時、後ろ脚の球節部分が地面や砂にこすれやすくなり、くもずれが発生しやすくなるのです。くもずれは、多くの競走馬に見られる外傷であり、走る速さと引き換えに負ってしまう傷とも言えます。
くもずれは、軽度の場合は自然に治ることが多いですが、重症化すると化膿したり、皮膚が壊死することもあります。そのため、日頃から馬の脚の状態をチェックし、早期発見、早期治療が重要です。予防策としては、馬房の砂を清潔に保ったり、馬の脚に保護具を付けるといった方法があります。また、調教の強度を調整することで、くもずれの発生リスクを低減することも可能です。このように、くもずれは競走馬にとって避けられない外傷ではありますが、適切な管理とケアによって、重症化を防ぐことができるのです。