
知られざる馬体の秘密:夜目の謎
馬の脚をよく観察すると、前脚の手首と肘の間あたり、そして後脚のかかとに当たる部分の内側に、栗色の小さな塊があることに気付くでしょう。一見、土の塊が付着しているようにも見えますが、これは「夜目」と呼ばれる馬の体の一部です。初めて聞く方は、何かの病気や怪我ではないかと心配されるかもしれませんが、ご安心ください。夜目はすべての馬に備わっている正常な組織です。
夜目の場所は前脚では前膊部(ぜんぱくぶ)の内側、後脚では飛節(ひせつ)の内側です。前膊部は人間でいうと手首と肘の間の部分、飛節はかかとに当たる関節です。この場所に左右対称に、一つずつ夜目があります。大きさは親指の爪くらいで、色は黒っぽい茶色をしています。硬さは爪のように硬く、表面はザラザラしています。
夜目の役割は、まだはっきりと解明されていません。一説には、馬が歩いたり走ったりする際に、地面からの衝撃を吸収するクッションの役割を果たしているのではないかと言われています。また、夜目の形状や模様は馬ごとに異なり、人間の指紋のように一つとして同じものはありません。そのため、馬の個体識別に利用されることもあります。例えば、競走馬の登録の際には、夜目の写真を撮影し、記録に残すことになっています。これは、同じ名前や血統の馬がいても、夜目によって確実に区別するためです。
ところで、「夜目」という不思議な名前の由来は、馬の学名「Equus caballus」に関係があると言われています。この学名の「caballus」の部分が、ラテン語で「小さな硬いもの」という意味を持ち、それが転じて「夜目」と呼ばれるようになったという説があります。夜目の見た目から名付けられたのではなく、学名に由来するというのは意外な事実です。まるで、馬の体に刻まれた小さな秘密の記号のようです。