急仕上げ

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調教

急仕上げ:そのメリットとデメリット

競馬の世界では、競走馬を走らせるための鍛錬は、時間と手間がかかる大変な仕事です。通常、馬の力を最大限に引き出し、最高の状態で走らせるためには、綿密に練られた鍛錬の計画を長い期間かけて行う必要があります。まるで職人が丹精込めて作品を作り上げるように、調教師は馬の状態を見極めながら、少しずつ鍛えていきます。しかし、時には様々な事情により、限られた時間の中で馬を走らせなければならない場合があります。これが「急仕上げ」と呼ばれる鍛錬の方法です。 急仕上げとは、通常よりも短い期間で集中的に鍛錬を行い、馬を走らせることができる状態に持っていくことを指します。例えるなら、じっくり時間をかけて煮込む料理ではなく、短時間で一気に焼き上げるステーキのようなものです。長距離の鍛錬を減らし、短距離の速さ重視の鍛錬に力を入れるなど、通常行う鍛錬の一部を省いたり、強さを調整することで、短期間での仕上げを目指します。これは、怪我からの復帰や、目標とするレースに間に合わせるためなど、様々な理由で行われます。 急仕上げは、馬にとって大きな負担となる場合もあります。急激な鍛錬は体に負担をかけ、怪我のリスクを高める可能性もあります。また、精神的なストレスも大きく、馬の体調を崩す原因にもなりかねません。そのため、急仕上げを行う際には、馬の状態を常に注意深く観察し、無理をさせないようにすることが重要です。調教師の経験と知識、そして馬への深い愛情が、急仕上げを成功させる鍵となります。まるでベテランの庭師が、繊細な花を育てるように、馬の個性を見極め、最適な方法で鍛えていく必要があります。急仕上げは、リスクを伴う方法ですが、状況によっては必要な選択となる場合もあります。そのため、競馬の世界では、今もなお、この難しい鍛錬方法が用いられています。
育成

競馬界の徒花「もやし馬」とは?

競馬の世界では、時折「もやし馬」と呼ばれる、まるで砂上の楼閣のような競走馬が現れます。パドックを歩く姿は絵に描いたような名馬で、均整のとれた体つき、光り輝く毛並み、力強い足運びなど、一見したところ欠点などないように見えます。堂々とした歩き方からは、風格さえ感じられるでしょう。しかし、いざレースが始まると、その華やかな見かけとは裏腹に、期待された走りを見せることができません。まるで見た目だけで中身が伴っていない、いわゆる見かけ倒しの馬なのです。 一体なぜこのような競走馬が生まれてしまうのでしょうか?その大きな原因の一つとして、育成期間における過保護な育て方が挙げられます。人間の子育てと同じように、馬の育成においても、過保護は様々な問題を引き起こします。 例えば、過保護な環境で育った馬は、外の世界の刺激に慣れていません。レースの緊張感や他の馬との競り合い、大きな歓声など、初めて経験する刺激に驚き、本来の実力を発揮できないことがあります。また、調教も馬の体に負担がかかりすぎないように、軽い内容に留められてしまう場合もあります。そうすると、見た目は立派でも、筋肉や心肺機能が十分に鍛えられていないため、スタミナ不足でレースの後半に失速してしまうのです。 さらに、過保護に育てられた馬は、精神的にも脆い傾向があります。少しのことで動揺したり、集中力を欠いたり、競走意欲を失ってしまうこともあります。つまり、彼らはガラス細工のように繊細で、プレッシャーに弱いのです。 見かけは立派でも、レースで結果を残せなければ意味がありません。競走馬にとって重要なのは、華やかな見た目ではなく、厳しい訓練に耐え、プレッシャーをはねのける強い心と体を持つことです。そのためには、育成段階から適切な負荷をかけ、心身ともに鍛え上げる必要があると言えるでしょう。