
返し馬でわかること、わからないこと
競走馬は、レース本番前にパドックを出て、本馬場入場後に軽い運動を行います。これを返し馬と呼びます。返し馬は、人間で言うところの準備運動であり、競走馬の心身の状態を整える重要な役割を担っています。
まず、返し馬は競走馬の身体を温める効果があります。パドックではゆったりと歩いている競走馬ですが、返し馬では速足やキャンター、場合によっては駈け gallop などを行い、筋肉をほぐし、血液の流れを良くします。これにより、レース本番で最高のパフォーマンスを発揮できるよう、身体を準備します。人間が運動前にストレッチをするのと同様に、競走馬にとっても返し馬は怪我の予防という点でも大切です。
返し馬は騎手にとっても重要な時間です。騎手は返し馬を通して、その日の競走馬の状態を最終確認します。馬の反応や動き、気合の乗り方などを細かくチェックし、レースでの騎乗方法を最終調整します。たとえば、馬が落ち着きがないようであれば、なだめながら走らせたり、逆に元気がないようであれば、軽く促して活気づけたりします。
さらに、返し馬は競走馬の精神面にも良い影響を与えます。レース前は、大観衆の声援や他の馬の存在など、普段とは異なる雰囲気に競走馬は緊張したり興奮したりすることがあります。返し馬を行うことで、これらの緊張や興奮を和らげ、集中力を高めることができると言われています。
このように、返し馬は競走馬にとって身体の準備だけでなく、騎手との意思疎通や精神的な調整という点でも重要な意味を持ち、レース本番で力を出し切るための欠かせない準備と言えるでしょう。