
競馬における「仕掛ける」とは?
競馬は、馬の力だけでなく、騎手の腕の見せ所でもあります。レースの勝敗を決めるのは、まさに騎手がいつ、どこで「仕掛ける」かという判断です。「仕掛ける」とは、レース終盤の勝負どころで馬を追い出すことです。最後の直線や最後のコーナーなど、ここぞという時に、騎手は全身全霊をかけて愛馬を鼓舞します。
騎手は、ただ闇雲に馬を走らせるのではありません。レース全体の流れを把握し、他の馬との位置取りや、自らの馬の調子を瞬時に見極め、最適なタイミングを見計らいます。これは長年の経験と鍛錬によって培われた高度な技術と、研ぎ澄まされた感覚が要求される、極めて戦略的な行動です。一瞬の判断の遅れが、勝敗を分けることになりかねません。
仕掛けるタイミングは、馬の個性によっても異なります。先行タイプの馬であれば、早めに先頭に立って、そのまま逃げ切る作戦も有効です。一方、追い込みタイプの馬の場合は、他の馬を見ながらじっくりと脚を溜め、最後の直線で一気にスパートをかけることになります。騎手は、それぞれの馬の持ち味を最大限に活かすため、綿密な作戦を立て、レースに臨みます。
そして、いよいよ仕掛けの瞬間が訪れます。騎手は、ムチや手綱、そして脚を使って馬に合図を送り、最後の力を振り絞るよう促します。観客席からは、大きな歓声とどよめきが起こり、レースは最高潮の盛り上がりを迎えます。一瞬の静寂の後、先頭でゴール板を駆け抜けた馬と騎手に、惜しみない拍手が送られます。まさに、競馬という競技の醍醐味と言えるでしょう。