
競馬と伝貧:知っておくべきこと
伝貧とは、伝染性貧血を短くした言葉で、馬だけに起こる感染症です。伝染性貧血ウイルスによってこの病気が引き起こされ、一度かかってしまうと完全に治すのがとても難しいことで知られています。
このウイルスは、吸血昆虫によって馬から馬へとうつります。たとえば、アブやブユなどがウイルスを持っている馬の血を吸い、その後別の馬を刺すと、その馬にウイルスが感染してしまうのです。また、注射針や手術器具などの医療器具を介して感染することもあります。そのため、競馬場や牧場では、これらの器具の使い回しを避け、常に清潔に保つなど、感染予防に細心の注意を払っています。
伝貧に感染した馬は、高い熱が出たり、貧血になったりするなど、様々な症状を示します。さらに、食欲がなくなり、だるそうにしている様子も見られます。病気が進むと、次第に体が弱っていき、やがて死に至ることもあります。現在、この病気を治すための有効な治療法は見つかっていません。そのため、残念ながら、伝貧に感染した馬は、他の馬への感染拡大を防ぐため、法律に従って安楽死させなければなりません。これは、競馬界全体を守るために必要な、とてもつらいながらも大切な決断です。
伝貧は、人へとうつる病気ではないので、私たち人間が感染する心配はありません。しかし、馬にとっては大病であることに変わりはありません。競馬関係者は、常に伝貧への警戒を怠らず、日頃から感染予防に懸命に取り組んでいます。馬の健康を守ることは、競馬という文化を守ることにもつながるからです。